メキシコ市、2026年8月15日 —メキシコのチャバ・カルタス監督が、麻薬王を英雄視してきた映像作品の描き方を問い直すNetflix映画『ラ・カプトゥーラ(逮捕)』を制作した。2016年に麻薬王エル・チャポことホアキン・グスマンを逮捕した実在の連邦警察官2人をモデルに、犯罪者ではなく、その逮捕に命を懸けた警察官を「英雄」として描く。*メキシコでは8月21日から配信予定。日本での展開は現時点で発表されていない。
こうした作品を制作した背景には、麻薬犯罪を扱う従来の映像作品に対するカルタス監督の問題意識がある。EFE通信社のインタビューで同監督は、映像制作者が麻薬組織の人物を「優れた存在や英雄」として描いてきた結果、観客が悪役に感情移入し、その身を案じるような状況さえ生んできたと指摘した。さらに、「メキシコには英雄が必要だ。善良な人間もいることを、ときどき私たちは忘れてしまう」と語った。ただ、軍や警察を美化することが目的ではなく、暴力や権力による脅威を前にしても屈しない人間を描きたかったという。
映画が描くのは、2015年に最高警備刑務所からトンネルを使って脱獄したエル・チャポが、翌年シナロア州ロス・モチスで再逮捕されるまでのストーリー。逮捕作戦を率いた2人の連邦警察官をアルフォンソ・エレーラとノエ・エルナンデスが演じるが、モデルとなった本人たちはエル・チャポに顔を見られたため現在も身を隠しており、制作陣が直接話を聞くことはできなかった。そこで、メキシコ人作家ベルナルド・エスキンカら脚本陣は、実際に判明している事実を基にしながら、不明な部分をフィクションで補って物語を構成した。
主人公となる警察官だけでなく、エル・チャポの描き方も従来の麻薬犯罪作品とは異なる。逮捕と脱獄を経験し、自らが率いたシナロア・カルテルでも内部抗争を抱えるなど、最盛期を過ぎた麻薬王として描かれている。カルタス監督は、犯罪者を必要以上に強大な存在に見せるのではなく、「食べ、泣き、苦しみ、そして逮捕され得る」生身の人間として描くことを重視したという。(EFE)

連邦警察官役のアルフォンソ・エレーラ(右)、ノエ・エルナンデス(左)=Netflix提供
