エクアドル:女性受刑者が映した塀の内側(2026年9月15日)

 「選ばれるとは思っていなかった」。エクアドル最大の都市グアヤキルの刑務所に収監されていたマデリン・デ・ラ・クルスは、刑務所内で始まった映画制作ワークショップへの参加が決まった時をそう振り返る。当時、同刑務所には約900人の女性が収容されていたが、参加を希望したのは約100人。そのうち、選ばれたのはわずか30人だった。彼女にとって、ワークショップに参加する時間は、刑務所での「憂鬱な現実」から離れられるひとときになったという。
 このワークショップの特徴は、外部の人間が刑務所を取材するのではなく、受刑者自身がカメラを手にしたことにある。女性たちは自分たちで脚本を書き、カメラを回した。撮影したのは廊下や居室といった風景だけではない。生理用品を手に入れることさえ難しい刑務所での日々の暮らしのほか、家族や子どもへの思い、過去の恋愛、孤独、そして自分がなぜここにいるのかという問い。外部の人間が選んだ刑務所の姿ではなく、そこで暮らす女性たち自身が見つめた日常と心の内がカメラに収められていった。
 ワークショップを企画した映画監督でエクアドル芸術大学教授のプリシラ・アギーレは、女性たちの境遇に触れるうちに一つの傾向に気づいたという。恋人や夫、兄弟など身近な男性の犯罪に間接的に、時には強制的に巻き込まれ、服役することになった女性が少なくないということだ。また撮影を通じ、経済的な事情から十分な弁護を受けられなかった女性がいたことも知った。
 収監された女性たちに重くのしかかっていたのが、子どもの存在だった。中には妊娠した状態で収監された女性もいる。刑務所では3歳まで子どもと母親が一緒に暮らすことができるが、その年齢を過ぎれば子どもは塀の外で暮らさなければならない。
 2018年から20年にかけて撮影された映像は76時間に達した。女性たちは撮影だけでなく録音や制作にも参加し、そこで生まれた映像はやがてドキュメンタリー『ノソートラス(私たち)』として一本の作品になった。参加した女性の多くは現在、すでに刑務所を出ている。
 『ノソートラス』は10月8日、グアヤキルとキトの映画館で公開される。

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